虹コンのライブがあったんですね、鶯谷で。そっちまで行くときはたいてい上野で時間潰すわけよ。
博物館・美術館群があるので。むしろこっちがメインだったりする。
丁度タイミグよく西洋美術館でモネの大展覧会が開催してた。
モネと言えば有名な画家ですわな。名前くらいは聞いたことあるっしょ。
西洋美術館って普段500円という安いお手頃の美術館なのに、なんとモネ展は2300円。
ちょっと価格差がありすぎて「たけぇわw 1300円くらいにならんの?」とか思った。
まぁ他の美術館は良い展覧会やってないし、上野の美術館群において今年の目玉的な展覧会だし、いっちょ乗り込んでみるかと。
ちょっと高いし、普段から色々な場所で展示してるモネだし、そんな乗り気もなかったんだけどね。
モネの絵は綺麗で素晴らしいし、嫌いじゃないけどもうちょっと毒々しい奴が好きだったりする。
なんならピカソくらいまでちょっとならイケる。
そんな感じだからモネに2300円出してまで行くべきなのか?と思ってた。
クロード・モネ 印象派
1800年も後半、当時はアカデミックな決まったセオリーに乗っ取った絵画、それも宗教画こそ至高であり、セオリー通りの絵画それ以外は排除対象「芸術的価値無し」なような時代。。ちょうど産業革命後で社会が科学的にも文化的にも激変していく時代。すこしばかり庶民の生活を題材にした絵画も評価されてきたかどうかという感じで、そんな中でアカデミックなセオリーに囚われない絵画を描き始め、次第に評価されたのがモネ達、印象派。
1872年に発表された印象・日の出。印象派という言葉の元になった美術史上重要な作品。
当時の人がどう感じたか分からないけど、誰もが見たことがあるような、心の中に残ってる景色/情景を見事に表現してる。
それまでの写実表現に徹した宗教画が至高だった芸術界を、印象派が当時からしたら革新的な絵により葬り去った。
これには写真の登場という、画家たちが目指してきた写実表現技法を無価値にする出来事も重なって、新しい表現の必要性があったこともあると。
モネ達印象派がアカデミックな美術を打破したことで自由な風が吹いて、芸術を新しい段階に引き上げたのがモネ。芸術史の革命に成功した非常に重要な偉大な画家。
この辺の激動の時代にジャポニズムとかの影響もあって、日本人的にもとても面白い時代なんよ。
絵画の素晴らしさもさることながら、この19世紀の西洋美術史の背景を知ってると全体として楽しめるはず。
モネは5m離れて観るのじゃよ
筆の跡がすごい訳よ。ぐっちょぐっちょって感じに塗りたくられてる。油絵描いたことないからどんな感じなのかしらないけど、ベチョっと塗りたくってたり、サラッと撫でていたり筆の跡ははっきりわかるよね。これも当時の絵画の本流からしたら、筆の跡が残る幼稚な絵を描いてきたと評価されるわけ。
明瞭な輪郭なんてものは無いし、現実に存在する輪郭からも色がはみ出ている。
でもこれが遠くから離れて観ると睡蓮の池になる不思議。
旧来のアカデミックな手法に乗っ取った絵を拡大すると細部まで、できるだけきちんと書き込まれて、その違いは一目瞭然。
展覧会は時系列で展示してある。これがとても良い。
老年期、すでに美術の大家となっていたモネの進化は止まらない。
さらに輪郭があいまいになって、描きたい主題が物体そのものから光の様子になっていくのが分かる。
展示の終盤は目を悪くし、色彩が良く分からなくなったモネ最晩年の作品たち。
それまでは青い絵だったが、ここで一気に赤い絵になる。タッチもさらに抽象的にと激変していく。
それでもバラのアーチなんかはちゃんとバラのアーチに見える。隙間からこぼれる光の表現とか遠くから見るとはっきりと木漏れ日だと分かる。近くで見ると明るい絵具がぐちゃッと盛られてるだけなんだけど。
スマホで見る2次元の画面表示では全く分からないけど、絵具を盛りまくって非常に凸凹して、立体的に創られている。こればかりは実物を目にしないと分からないから、一回行くことをお勧めする。
モネの絵は仕切り線から観ても仕方ないから、前で見てる人の列を無視して5m下がって観るじゃよ。
その後、近くまで行って絵具の使い方とか筆走りの跡など細部を観察。きっとモネの凄さが解るはず。
すごいわ。
再入場不可なので戻って2周目した。あまりに良すぎてしまった。
もう少し毒のある絵の方が好きだけど、やっぱりモネは凄いわ。原点であり頂点、偉大過ぎる。
改めてそう思った良い展覧会だった。もう一回行くかもしれない。
『モネ 睡蓮の時』 国立西洋美術館