突然発表された蛭田愛梨ちゃん出演の舞台『彼女のいない教室』。
アイドル時代に出演していた華やかなガールズ舞台とは真逆。歌もダンスも武器も派手な演出もない、小劇場でのストレートプレイ。テーマは高校でのいじめ問題という社会派の現代劇作品だった。
共演者も主催事務所も知らない名前ばかりで、初の男女混合劇、さらに今回が初舞台となる出演者もいる。
卒業後に発表された一発目の仕事で、正直「なんだこの仕事……?」という声がファンの間でもあった。

結果から言うと、過去最高に良い舞台だった。
結局チケットを買い増して4回観た。出演時間が過去作より圧倒的に多かったというファン目線の満足感を差し引いても素晴らしい舞台だった。ストーリ自体はあまり興味がなく、ダメ人間の私には共感も特にない話であったが、本当に蛭田さん始め役者たちの演技や演出が良かったし、小劇場という空間も良かった。
そして主演の飛龍つかささんをはじめ経験豊富な役者が揃う中でも、蛭田愛梨ちゃんの存在感は全く引けを取っていなかった。
蛭田愛梨ちゃんが演じたのは、冷淡で口が悪く、合理主義を気取る女子高生・田宮。
本人のフワッとした人柄を知っている人ほど驚くような真反対の役柄だったが、それを見事に演じ切っていた。
まず目がいい。相手を睨みつける鋭さ、気怠い態度の時の目線、心が揺れた瞬間の表情、感情を押し殺した視線。そのどれもが小劇場だからこそダイレクトに伝わってきた。
口論シーンではヒートアップしての早口の長台詞でも一切崩れず、滑舌も声量も抜群。4回の観劇、どの席でもセリフが驚くほど聞き取りやすかった。明らかに声量がある共演男性俳優と比べても、声の通り方はまったく見劣りしなかった。
そして最終盤の涙を流すシーン。ほとんど瞬きをせずに耐え、計算されたかのようなタイミングで涙がこぼれ落ちる姿は役者魂を感じた。
個人的に最も印象に残ったのは、田宮が終盤に追い込まれて強気だった態度が一気に青ざめていくシーンの表情の変化。凄かった。あのシーンだけでも見る価値があると思える「役者・蛭田愛梨」を見せつけられた瞬間だった。
ちなみに、そこから反省してしょぼくれた表情がバチクソ可愛かった。

これまでの作品は2.5次元舞台ということで「創作キャラクター」を演じている印象だった。元キャラの知識がないから「まぁ、そういうキャラなのね」で納得できていた。
過去作は過去作で見事に演じていたけど今回は違う。本当にどこかの高校にいそうな女子高生・田宮が、そこに実在していた。
アイドルを卒業してから「これからどうやってやっていくんだろう?」という不安は少なからずあったが、今までの配役では到達しえない新境地を見せてくれた。
それは想像していた期待をはるかに超えるパフォーマンスで、2回目の観劇では「ここまでできる役者だったのか」と感動で少し涙目になったほど。演技だけで「またこの人の舞台を観たい」と思わせる力があり、この先が楽しみになった。
SNSでは「田宮役が良かった」という感想だけでなく、「田宮ちゃんかわいい」という声も多く見かけた。本人が武器にしてきたビジュアルでもしっかり初見の人達の印象に残っていたようで、それもファンとして嬉しかった。
チケットやらなんやら含めて結構なお金を使ったけど、心から「応援してよかった」と思えた舞台だった。またこういう小劇場での硬派な舞台に出てほしいなと思う。
でもやっぱ舞台観劇は金が掛かりすぎるゾ


