【論評】”和製”スーパーカー ビースト【救いたい】

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こんにちは 自動車デザイン評論家 『徳大寺もちょ恒』です。
今回は車好き界隈にあまりにダサいと衝撃をもたらした和製”スーパーカー 白岩モーター商会 ビースト(Beast)について論評する回でございます。
福島の小さな小さな有限会社をやり玉に挙げるのも忍びないが、このビーストは心を鬼にして評価しなければならない問題作です。なんなんすかねこれ。
低質な記事を量産して読者の失笑を買いつづけてる「くるまのニュース」にも取り上げられ、ちょっと話題になった1台。
かなりキツイことを書くが最後にビーストを救う妙手を発見したので是非読んでほしい。
なお実写も見たことないし、この車はHPに載ってる画像といくつかのニュース媒体でしか情報がない。
ある程度は想像で書くことをご了承ください。

出典https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_014.jpg

まずパッと見てどうだろうか?
そうですね、あまりにダサい。ダサすぎる。酷い・醜い以外の言葉が出ないデザインです。
直線基調というかクサビ型とスリットを乱用したデザイン。とくに後ろに行くほどゴテゴテになって限りなください・・・。なんなんすかねこれ。

唯一褒められるところは縦型ヘッドライトが異端デザイン界でも評価が高い、私が大好きなWillサイファのものを流用しているとこだけ。カッコいいとかではなく「サイファのヘッドランプだ!」という単純なサイファ好きの喜び。

ネットの反応をみても95%くらいは「ダサい・私は好みじゃない」など散々。

この車、元になったベース車は『ランボルギーニ ディアブロ』
リアエンジンの堂々たるスーパーカーです。
この車に板金屋の白岩モーター紹介が外装をメインに作り上げた車がビーストです。”和製”とは?

それではビーストの各部から見てみよう

フロント

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_020.jpg

まずグリル
中央に大きく張り出した主張激強のグリル スラットが西洋甲冑のヘルメットみたい。
両端にはサイファの縦型ヘッドランプが付く。
その間にはフォグっぽいランプと、謎の黒い空間。なんなんすかねこの黒いところ。
奥行があるけど、なんもなさそう・・・。インテクでもなくガチでなんもなさそう。
盛るのを諦めんなよ。

そもそもである、ディアボロのフロントを見てほしい。
エンジンもラジエーターも前に無いので開口部は両端に小さく、おそらくブレーキ冷却用かなにかと思われる穴があるだけ。この車にはフロントにグリルの必要性が無いんですよ。
ビーストのフロントのグリルからは何を取り込んでいるんですかね?

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_016.jpg

ボンネットに移ろう。4段に段差をつけられたボンネット。
この段差に設けられた狭いスリットから、意味の分からないグリルで取り込んだ空気を逃がすんでしょうか?
と思ったらスリットなさそうじゃん!何のための段差なんだ?
ぜっかく前面の綺麗な空気の流れが当たってきて流れるのになんで乱すような真似を・・・
ボルテックスジェネレーターもつける位置考えないと。そんなこと考えてないだろうけど。

正直フロントの真正面からの見栄えはそこまで嫌悪感は無い。面白いデザインだなと思う。
しかし、せめて段差にスリット穴開けるとか機能美をみせてほしかった。

ルーフ

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/japanese_sc_2205_11.jpg

特徴的なデザインのルーフは、空力を考慮し、走行中に入ってくる空気でダウンフォースを発生させ、さらにエンジンルームへエアを送り込む設計となっています。 https://valueprogress.co.jp/lineup/beast.html

ちょっと意味の分からない無限蛇腹ルーフ、エンジンルームに繋がってるインテクらしい。
見た感じ各段差に隙間があって、たしかにインテークらしいが効率が悪すぎるような。
こんな薄い隙間からはボディ周りに張り付いてる境界層の遅い空気しか入らんよ。
一番前、フロントガラスの上に申し訳なさそうにウィングついてるのも意味わからなくてカワイイ。
絶対空力の効率を何も考えてない。「ここにコレあったらなんか面白そう」これがデザイン方針であろうことは予想がつく。

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/japanese_sc_2205_03.jpg

サイド

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_014.jpg

何重に直線・クサビを重ねているけど、随所で「?」となる。
フロントタイヤの後ろの段差。ここは隙間空いて空気が流れてそうではあるけど、無駄な段差で乱流になってそれを巻き込んだ空気を後ろのインテークから取り込むことになるわけでしょう?
もちろんディアボロは滑らかに空気が流れリアのインテークに入るよう処理している。

Version 1.0.0


そしてリアタイヤの上まわり。なんすかここの段差たち。要る?必要ある?
変に、無駄に空気が跳ね上げられて、最後端のラジエーターインテークに入る流量すくなくなるんじゃ?どこでラジエターの流量確保してるのだろうか。窓ガラス後端にインテークぽい感じはあるけどこれがメインかな。
てか、ここまですべての段差、絶対に騒音の元になるよね?
とにかく高速時の風切り音やばそうなんだが。

ちなみに私個人的な事ですが「飛行機の翼端周りの流体解析 翼端板の効果について」が卒業研究でした。
人より流れには詳しいです()

リア周り

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_013.jpg

まずウイング 
なんなんすかねこれ。
あのね、何枚も重ねれば良いって話じゃないでしょ。最高速の伸びは悪くなるし翼間が近すぎるとお互いに空力的に干渉したりする。一番デカいウィングに至ってはかなり角度が立っている。その角度なに? 4段もウィングあるのにさらに過激な迎え角でダウンフォース獲得しようとしてるの?
そもそもスーパーカーなら電動で速度に合わせて角度変えてほしいんだが出来なさそうだ。

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_014.jpg

リア中央最上部に配置された4本のマフラーと大迫力のリアディフューザー。走行時のダウンフォースが有効に働くよう設計しています。 https://valueprogress.co.jp/lineup/beast.html

次にリア
なにこれ。。。酷い。
ディフューザーもなんでその数になったの?なんでもいっぱい付ければいいと思ってるよね?
マフラーもなんでそこ?
それらを置いておいて、スリットつけすぎいいいいい!!!
もうここまでくると言う事はないけど、一言だけ。

洗うのめんどくさそう。

参考 ディアブロの中身 

ビーストとは? ビーストを救いたい!

とここまで各部を見てきた訳ですが、一言で言うと
「存在意味の分からない、説明不可能な部品が無限についてる」
という事。
世の中のスーパーカーって風洞実験を繰り返し気流を調整して超高速走行での安定性を考えてるわけで、さらに軽量化のために無駄を削り、どれも綺麗な無駄のないデザインになってますよな。
その制約の中で各社デザインを突き詰めて仕上げてきてる訳で、やっぱりカッコいいんですよ。

一方、このビースト。
ネットで最初にこの車を見た時の印象は「ミニ四駆好きが作った小学生の考えた最強のスーパーカー」でした。割とこの意見は共通のようで幾人から同じ反応が見られました。

でもさっきね、気付いたんですよ。
この車の源流がミニ四駆じゃなくて、一体なんなのかに・・・。
そしてこれがこの車を救う妙手になってしまう事にも。

そう、無駄な空力部品がいっぱい付いてるというダサい、ダサすぎるカスタム
かつて流行りましたね。


そう
バニングカー
です!

いやーダサいですねぇ。
令和の今はもはや許可が下りない希少価値から大事に乗ってあげてほしいと思う存在でありますが、流行ってた当時からあまりのダサさに笑っていたもんです。
リアに浜崎あゆみのマークつけちゃったりね。
虚飾の限界に挑戦した結果ダサすぎる形を手に入れたバニングカーとビースト、同じ。

で、会社の他のカスタムカーも見てみました。
このセルシオを見て確信しました。

出典 https://valueprogress.co.jp/themes/vp@site2019/images/lineup/japanese_sc/beast_013.jpg


この会社、北関東のヤンキーのセンスだ!!!

って。会社の所在地も福島県。これは間違いない。

完全に北関東にいた、バニングカーや下の車をカッコいいと思ってる人のセンスです。
バニングカーを本気でカッコいいと思ってる異常者だけがこのビーストをカッコいいと評価しているはず。

ビーストをバニングカーとしてみるとすべてが納得いく。
そのダサさもバニングカーとしての誇りあるダサさ。虚飾で飾り立てるのがかっこいいと思ってるアレな思想。バニングカーをカッコいいと思ってる異常者からはめっちょカッコいいはず。
常人が一切理解ができないのはあたりまえだった。

つまり会社は和製スーパーカーなどと主張せず、
スーパーカーをバニング調でカスタムメイドしました!
って発表したらすべてが救われる。犠牲になったディアブロもきっと救われる。
バニングのダサさをスーパーカーのレベルにまで突き詰めたら。。。と思えば、たしかに完璧にスーパーカーにふさわしい、行き過ぎた意味の分からないバニング・カスタムに仕上がっていて大変によろしく素晴らしい。スーパーカーなのに機能美なんてものが1ミリもなく、全然美しくないのも納得がいく。

ビーストは令和のバニングカーでした!

終わり

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