生分解性樹脂:PLAの3Dプリンター製ルアーの現実

3Dプリンタールアー
世の中からプラ・ストローを消し去った一枚 紙ストローのアイスコーヒーはマジ不味い。

環境問題への高まり

そう遠くない将来、ルアーや釣り糸が原因で希少な野生動物が傷つく映像がSNSでバズり(いまもいっぱいあるけどw)、著名なセレブなどがセンセーショナルに取り上げて、結局EUから釣り具のプラ規制が始まるんではないかなと思ってる私、もちょおです。

まぁどう考えても人類の未来のためにも圧倒的に正しいので、そういう流れは支持するけどね。

普段から魚釣りてぇ~と環境に負荷をかけまくり、魚の命を虐め倒してる分際ですが、環境に残してしまった糸やプラルアーが野生動物を知らない間に苦しめてる現実があるのはやはり気分は良くないのです。とても身勝手なのです。ごめんなさい。

高分子素材が一般的になって50年程度。2050年には海中には魚の総量よりプラの総量が多くなるとかなんとか。
でも、世の中はまだまだ、袋1枚持っていくか3円出せば済むレジ袋にぐちぐち文句を言う人がいるレベル。
こんな便利生活を延々と次世代の釣り人も続けていたら、まぁお察し、きれいな砂浜はプラ浜になりますわな。もうなってるけど。
今年の流行語はSDGs? 変に横文字じゃなくて今まで通りに持続型社会って用語じゃダメなんか?
まぁ個人個人が環境を考えて行動すべき時代になってきたんだなと。
しかし、もう手遅れだろうから「人類最後の輝きをみんなで楽しんで、みんなで一緒に破滅しよう派」じゃダメかな?

そんなことを日々思っていたら、SNSにて某メーカーより

【生分解性樹脂PLAを使った3Dプリンタールアー発売!】

と宣伝を見つけました。
とても良い事だと思う。非常に喜ばしいこと。
昔、いっとき生分解性の釣り糸が流行ったが、その流れは続かなかったですね。
ただ、まちがいなく時代は変わってきてるので、今後は環境負荷が少ない釣り具を選ぶ行動がスタンダードになってほしいと思っています。なのでこういうルアーが出てくるのはとても良い事だと思います。
将来的にはタックルデータなどに不分解の素材を書いてると今でいう立ち禁で釣った魚と同じような扱いの世の中になったりしてね。

そういえば釣り業界でもエコマーク的なものすでにありましたね。
この賦課金が何に使われてるのか謎ですが。
おっちゃんたちの活動後の打ち上げ飲み食い代に使われてるんかね?
なんか調べたら東京湾にマダイを放流する予算に使うとか。ECOやなくてEGOでは、それは。


散々書いておきながらですが、もちょおは変な外国のプラルアー売りまくってる分際です。
一応、どっかの大学で環境生態学部の林学を専攻していたので環境問題への意識は昔からそこそこ高いですのです。ほんとです。
日々平和に暮らしている何の罪もない魚たちを虐めて楽しんでる分際ですが。
ほんまごめんなさい。

また、ご存じの方も多いかと思うけど、もちょおも3Dプリンターで作ったルアーを販売しています。
かなりの量を作ってきました。最近はほぼ確立して磯釣りでイソマグロやGTなど自分の設計で釣ることができています。
これらは基本的にはABS樹脂で作っています。ABS樹脂は一般的なルアーと同じ自然界で分解しないプラスチックです。

もちろん自分も生分解性であるPLAで作れないかと散々考えてました。
今まで釣りしていて、いくつルアーをロストして、鉛を底に引っ掛けて、釣り糸を何百メーターと海に残してきただろう。
今年、小笠原の海中清掃に協力させてもらったのも少しばかりの懺悔。
今もあの綺麗な小笠原の海のどこに何を引っ掛けたかはだいたい覚えています。

小笠原の名礁の海中はこうなっています。海中清掃の様子。

あの時海に残したPEラインなんかは数百年残るだろう、ほとんどの物が自分が死んでからも残る。丸ごとだったりマイクロ化して漂っていたりして。海の中は見えないから隠した気にはなるけど、実際は今現在も間違いなくある。気分は良くない。

だからこそ生分解性のルアーや釣り具があれば積極的に使っていきたいとは思っています。
でも全然使ってないけど。

散々ここまで環境のことを言ってきた自分の作るルアーはPLAは使っていません
分解不能なABS樹脂で作っています。(二回目

なぜなら現状、ルアー素材にPLAを使うのは不都合な真実と実用的じゃないことがあるからです

実用的じゃない理由

まずPLA樹脂はポリ乳酸と呼ばれるもので、トウモロコシなどを植物を原料にした生分解性のプラスチックです。
PLA樹脂は3Dプリンター最大の問題である「加工品の反り」がほとんどなくプリンティング失敗が起きにくいため3Dプリンターとの相性が良く、3Dプリンターにて非常に一般的な素材です。
初心者はまずPLA樹脂で3Dプリンターのコツをつかむのが定番だと思います。
そんな定番の素材ですがなぜルアーに実用的じゃないかと言うと

耐熱性が非常に弱いです!

まずコレにつきます。
3Dプリンター界では硬くて衝撃に弱いから向かないとか色々言われていますが、非常に熱に弱いです。熱というか高温にです。
とりあえず、この動画をご覧ください。3Dプリンターの購入を考えてる方は必見です。

どうでしょうか。

ルアーを車内放置、だいたいみんなしますよね。丸一日とかじゃなくちょっと食事する数時間とかでも。
食事で放置する1時間、今日の釣り場には不要だからと車内に置いてきたPLA製のルアー。
車内温度の上昇で軟化の可能性が大いに上がります。
動画はダッシュボード上で直射日光を当ててますが、車内温度の高温が長引けばルアー本体の温度も上がるため、帰ってきたらルアーが凹んで曲がってるなんてことになります。
車内でなくとも炎天下の磯、とくに黒い物体の上に置いたら多分やばいかな。表面温度は簡単に気温以上になりますので。
36度の最高に暑い8月のフィールドでバッカンの中、タックルボックスの中に入れててもそれが長引けば相当に怪しいです。

PLAルアーは赤ちゃんと同じです、車内放置してはいけません。

どのくらい軟化するかというと、自重で勝手に凹むくらいに柔らかくなります。握ればなんなく凹むレベルです。ゴムと違って弾力性は無いので戻りません。
PLAは50~60度くらいから軟化し始めると言われています、もちろん温度が高温なほどやばいです。
都合の悪いことに50~60度というと丁度夏場の炎天下の車内がその温度になってしまうんですね。

ABSはどうかというと100度ちかくまでは軟化しないようです。
いくら炎天下で車を放置してもさすがにABSの軟化温度までは上がることはまずないので、この違いが実用性に大いに関わってきます。

PLA製ルアーは取り扱い注意


PLAルアーを出したメーカーのHPをみたら耐熱性が若干弱いと注意はかいてあるんですが、正直若干どころではないですね。
もしかしたら技術革新等で若干レベルにまで耐熱性をあげてるのかもしれませんが。
 ※一部には耐熱性を上げたPLAもあるようですが。

今まで車内に使う素材は、ABSと耐熱性が高いフィラメントを使っていたのだけどもABSを使い切ってしまったので、PLAで製作したのが運の尽き?。

直射日光が当たらなければ大丈夫だろうと思っていたけど、その考えは甘かったようで車内温度50度になっていた今日、ステーの赤丸部分の形状がまっすぐな形に変形してしまった?。

車内に使う素材にPLA樹脂を使うのは厳しい~(汗)
https://super-evolution.com/3dprinter/post-7168/

この特性を知ってれば取り扱いに注意して夏場をやり過ごすこともできるかとおもいますが、
世間一般の釣り人はそんなことは知らないし、磯で直射日光の下に放置など当たり前にしてる現状を考えて私はPLAでのルアー販売はまだ早いと思い、ABS樹脂を選択しています。
実際、年に数回しかチャンスの無い灼熱の磯で、いちいちルアーの耐熱性なんて気にしている暇はないですし、交換したルアーはその辺にポイ~と転がしてますので。
PLAでやったら磯の形にフィットするくらい溶けてしまいそうな気がします。

PLAルアーをお考えの方は「高温の環境下に置かないこと」だけは忘れないようにしたほうがいいでしょう。

真夏は日陰に置きましょう。タックルボックスの中でも安心できません。

PLAの生分解性は、ほぼ嘘

そしてPLAの最大の売り文句【生分解性】という特性、実はこれは釣りにおいては”ほぼ嘘に近い何か”です。
釣りにおいてこの生分解性を生かすと考えると、海底に根掛かりしてロストしたときだとおもいますが、実はPLA、海中では分解しにくい素材です。

「市場に出回っている生分解性プラスチックは、土壌環境において分解することを想定して作られています。それらが海に流れてしまった場合、積極的な分解は起きないので注意が必要です」

そう説明するのは、海洋研究開発機構の三輪哲也博士だ。

https://www.vogue.co.jp/change/article/ask-an-expert-biodegradable-plastic

残念ながら根掛りしたPLAルアーが短期間で分解して跡形もなく消え去るなんてことはないです。
跡形もなく消え去るには土壌中で、適した温度と水分という条件がそろったときです。
海水中では条件が整わないためABSと同じく相当長く残り、そのうちマイクロ化して漂い、その破片を海鳥やウミガメが呑み込めば腸閉塞などで死に至ることもあるでしょう。

PLA製のストローは数年漂ってからウミガメの鼻に刺さることも普通にありえる、実は水中では分解不能なプラスチックとあまり変わらない樹脂です。
このあたりの引用リンクに生分解性プラスチックについて詳しく書いています。

困ったことに「生分解性」という言葉は、エコで環境に優しいというイメージを植え付け、消費者や企業に大きな誤解を与えています(Kubowicz & Booth 2017)。

プラスチックが「生分解性」あるいは「堆肥化可能」などと表示されていると、消費者や企業は、あたかもどんな条件下でもプラスチックが(特殊な条件下でテストしたのと)同じように速いスピードで分解されるものだと勘違いをしてしまうのです(Kubowicz & Booth

「生分解性プラスチック」が地球に優しいウソホント
https://lessplasticlife.com/marineplastic/driver/biodegradable_plastic/#i-4

ただ一般的なABSは「半永久的に分解しない」という点には注意してください。
ゼロと1では違います。一応条件が合えば分解するのがPLAです。
また植物由来のため破棄時に大気のC02組成に影響がないカーボンニュートラルな素材ではあります。
現在ではその方面のほうが注目されているらしいので、その点で環境的に優れている素材ではあります。(トウモロコシ畑が自然を破壊してるとかいう違う話は無しで)

ただやはり高温化での取り扱いの難しさは厳しい物があります。

生分解性のルアー素材は今後に期待

メーカーの生分解性のルアーを出すという心意気は非常に喜ばしく評価したいです。
PLAをあきらめた人間からすると、とても応援したい取り組みです。
ただ売るとなるともっと詳しく説明しないとダメでは?と。
「耐熱性が若干弱い・生分解性」
たしかに嘘ではないんですが、お金を取る商売ならこれらは言い過ぎであるのが残念ですね。
特性を何も知らないで買う人が普通にいる世の中、みんながみんな言われた注意点をしっかり守ってくれるかという点もあるし、せめて高温時の変化画像などを載せるべきかと。
高温時でも全く軟化しないと言うならなおさらあれば武器になるので。

自分もPLAで作って「環境にいいよ!」的な売り方はいけるんじゃ?と考えてたこともありましたが、実は水中ではほぼ分解しないと知り「ん~、生分解って言ったらほぼ嘘だし、車内放置できないし、ならABSでいくか しかたない」となりました。
売り文句で環境を謳うなら昨今のマイクロプラへの心配をして買ってくれる意識の高い人もいると思う。でも釣りにおけるPLAはおそらく環境意識の高い消費者が望んでいるものには遠く及ばないのが現実かと。
PLAで売るならデメリットや現実をちゃんと伝えたうえで納得して売ってほしい、買ってほしいかな。
人様の商売にケチつけてなんなんだって話だけどw
PLAは難しい素材だと思っています。色々。

最後に昨今の環境問題の高まりからみると、今後はますます素材開発が加速していくんじゃないか思います。とくにマイクロプラスチックは毎日のようにニュースになっていますので、野外でも使える実用的な耐熱性と水中での分解能力を得た、3Dプリンター向けの新素材の開発に期待したいところですね。


余談
漆塗りの竹竿に、糸はテグスサン。魚はもちろんリリース。
ルアーは植林地の木材から自作。接着剤はニカワ、コーティングにエポキシはダメですよ。
古来より伝わる伝統のラッカー”漆”のコーティングで。紫外線に弱いので取り扱い注意です。
ルアーの装飾は螺鈿と金粉。
そんな持続型の釣りを世界に広めるyoutubeチャンネル
「SDGs Fising」
だれか作っていいですよ。


そもそも魚釣りやめるのが自然環境にいいんじゃねーかって話だけど。
徳川綱吉は今の時代に生まれるべきじゃったな、意識高い系ヴィーガン海外セレブとコラボしてインスタのフォロワー500万くらいすぐいけそう。

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